TMS 東京映画映像学校

カチンコの役割とは?

2020.06.19

監督の「ヨーイ。スタート!」の声に合わせて、カメラの前で黒いボードを「カチン!」を打つところから映画の本番は始まります。
あの黒いボード(最近は小さいホワイトボードのこともあります)のことを、映画・映像の世界ではカチンコといいます。

担当は一番下の助監督です。
通常はサード助監督、大きな規模の撮影現場だとフォース助監督になります。

では、カチンコの役割って分かりますか?
いつも学校の授業で問いかけると、学生からは「気合いを入れる」「場を引き締める」って答えが返ってきます。
それ、間違ってないです!
確かに、あの乾いた響きで現場の空気感は張り詰めます。

ですが、ここは本来の役割について説明しておきましょう。
映画・映像の撮影で、映像と音声は別々の媒体に記録されます。
よって、編集するときにこれを合わせる必要があります。
その際、映像ではカチンコが合わさった箇所(コマ)、音声ではカチンの音がした箇所(コマ)でピタリと合わせていきます。

映画・映像の業界に携わっている人は1コマずれても分かりますし、一般の人でも3コマズレると分かってしまいます。

それくらい重要な作業なのです。
これを映画や映像の世界では同期、シンクロといいます。

と理屈でいうと理解できるかなあと思いますが、いざこれを打つのはかなり大変です。

まず、緊張で手が震えます。
本番って、俳優のみならずスタッフもみんな緊張します。

(出典:http://hayashi-kikaku.co.jp/2019/08/kusuo-02/ )

衆人環視の中で打つわけですから、たまったものではありません(笑)

そして打った瞬間はボードが静止していなければなりません。
ブレたり傾いたりしたら、どのコマで重なっているのか判別がつかないからです。

さらには打ったら直ぐさま引かなければなりません。
演技が始まってしまうからです。
俳優も緊張しているので、カチンですぐに演技をはじめてしまいます。
が、画面にまだボードが残っていたりするんですよね。
そんな時は事前に俳優に「すみません、カチンから芝居をはじめるのを少し待ってもらえませんか? カチンコが引き切れないので」とこっそりお願いしたりもします(苦笑)

さらにさらに、引いたら、微動だにできません。
画面に映り込んではいけないのは当然で、少しでも動く、つまり体重移動すると、セットが揺れたり音が出たりするんです。
もちろん、ゲップやシャックリもダメです。
そんな時にお腹が鳴ったりしちゃうんですよね……

(出典:https://www.sozai-library.com/sozai/14117 )

そんなこんなで、演技が終わって監督が「カット!」とかけたら、今度は画面に入らない位置で「カンカン」と二度打ちます。
これで一つのテイクの終了を告げるのです。

書いてるだけで、映画・映像の世界には注意すべきことがいっぱいでうんざりするんですが……大変ですよね。

映画・映像を教えるTMS 東京映画映像学校では、この練習を何度もやります。
監督、助監督、俳優の役割を決めて、実際にカメラを覗いた上でのシミュレーションです。
とはいえ、なかなかそれでは上達しなくて、あとはただただひたすら実践になってきます。
学校を卒業後、プロの現場に入って、カチンコの打ち方を教えてくれるかというと、まず教えてくれません。
それは「知ってるもの」という扱いになります。
うちの学校でも、将来に備えて、何度も練習をしていますよ!

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